• TOP
  • サムライブログ
  • 企業価値担保権をわかりやすく解説~事業承継、M&Aに携わる専門家必見~


企業価値担保権をわかりやすく解説~事業承継、M&Aに携わる専門家必見~

企業価値担保権とは?


全体像の確認

「企業価値担保権」という用語が広まってきました。

法律施行前で耳慣れない用語かもしれませんが、重要なキーワードなので、本稿では簡単に紹介だけさせて頂きたいと思います。


既存の担保権との違いは?

企業価値担保権という用語をそのまま分解すると、「企業価値の担保権」です。
担保権とは、借金の不払いといった事態に備えて、債権者(貸主)が確実に債権回収できるように設定するものです。
担保権には、抵当権(例:住宅ローンにおける不動産担保)などの「物的担保」と、連帯保証などの「人的担保」があります。
この点、企業価値担保権は、不動産といった「物」や連帯保証人といった「人」ではなく「企業の価値」に着目するものであり、事業者の技術力、ブランド力、ノウハウ、顧客基盤等の無形資産を含む事業全体を担保の目的にしています。


いつから施行?

令和6年6月7日、事業性融資推進法(事業性融資の推進等に関する法律)が成立し、その翌週14日に公布されました(令和6年6月14日法律第52号)。

同法は、公布日から起算して2年6ヶ月を超えない範囲において政令で定める日から施行されます(附則1条)。すなわち、遅くとも令和8年12月中旬までには施行されます。
事業承継、M&A、労務DDに携わる専門家、普段から経営者と関わる士業としては、今後の動向が要注目なトピックです。


参考リンク

金融庁/事業全体を対象とする担保制度の検討
事業性融資の推進等に関する法律(令和6年6月7日成立)
https://www.fsa.go.jp/policy/jigyou_tanpo/index.html


企業価値担保権の役割


初期段階

金融機関による融資は、原則として、当該企業に土地や建物等の有形資産があることや、経営者がそれなりに財産を持っていて連帯保証人等になれることが前提でした。
それゆえに、有形資産に乏しいスタートアップ企業は融資を受けにくい状況にあり、経営者保証により事業承継や思い切った事業展開を躊躇する事業者もありました。
そこで、企業の有形資産担保や代表者の人的保証だけではなく、事業価値全体に担保権を設定できる企業価値担保権の役割は重要になります。


中期・財務状況の悪化時

不動産等の有形資産担保権を設定した金融機関は、返済が滞った場合になって担保権を実行するという関係性にあるので、融資後に平時から事業者と緊密なコミュニケーションをとることは少ないと思われます。
これに対して、企業価値担保権を設定した場合は、金融機関としても事業価値や事業の将来性に強い関心を持ち、一方でそれは事業者としても適時適切な支援を受けやすくなります。したがって、金融機関と事業者との関係性が、事業価値の維持・向上という同じベクトル向き、共通の目線になります。これは金融機関と事業者がお互いにとってより良い関係だといえます。


事業性融資推進法の施行に向けて


今後の企業における取組姿勢

そもそも資金調達を考えていない場合や不動産等の有形資産担保を用いて資金調達が可能な場合は、企業価値担保権は既存の実務を否定するものではないので、本件トピックは企業経営上あまり関係ない事柄に思われるかもしれません。しかし、企業価値を高めるという方向性それ自体は、融資を受けるか否かを問わず、共通して重要な事柄だといえます。
企業価値担保権は、中小企業のスタートアップだけでなく、事業承継の場面等における資金調達を円滑にすることが可能になりますので、後継者不在により事業承継に悩む企業のM&Aという場面でも活用が期待されています。


これからの士業がやるべきこと(社労士の場合)

経営者と平時から接点がある各専門家士業は、普段から財務面および労務面から企業価値を高めることに努める必要があります。
この点、例えば、社会保険労務士(社労士)でしたら、M&Aにおける労務DD(デューデリジェンス)で問われる事項(適正な労働時間制の整備や時間外労働にかかる割増賃金の計算等)について整備することで、潜在的な企業価値の下落を防ぐアプローチになります。また、ワークエンゲージメントを高める健康経営を目指して企業価値を根底から上げていくアプローチも有益です。
そして企業にとって最も重要なのは、単に申告業務や手続業務を依頼するだけの薄い関係性の士業ではなく、普段から緊密なコミュニケーションが取れる心意気のある専門家士業が身近にいることだと思います。


一目でわかる一覧表は当事務所コラムに載せてあります。

ぜひご参照ください→コチラ

Base One Hun未登録の方はこちら!

登録して事務所の紹介を掲載しませんか?

サムライナビ未登録の方はこちら!

紹介文を掲載して提携先を探しませんか?

※登録にはBase One Hubへの登録が必要です