経営者、企業労務・人事担当者向け~2025年の法改正~

1 雇用保険法


⑴ 自己都合退職の給付制限期間の短縮

【改正内容】
自己都合退職の場合における失業保険の給付制限期間が、現行の2カ月から1カ月に短縮されます。ただし、5年以内に3回以上の自己都合離職の場合は3カ月間となります。

【企業の対応】
離職者への適切な情報提供が求められます。経営者としても、円満に退職の合意を取り付けたいケースの際に必要な前提知識です。


⑵ 出生後休業支援給付、育児時短就業給付の創設

「出生後休業支援給付」及び「育児時短就業給付」が創設されます。
これらは育児休業給付と併せて、育児休業等給付となります。

《出生後休業支援給付金》
両親ともに14日以上の育児休業取得で、28日を上限に給付率13%を上乗せ支給(給付率合計80%)

《育児時短就業給付金》
2歳未満の子を養育する短時間勤務者に賃金の10%を上限として給付金を支給


⑶ 参考リンク

参考:令和6年雇用保険制度改正(令和7年4月1日施行分)について


2 育児休業関連・雇用保険法施行規則


育児休業給付金の延長申請 厳格化

【改正内容】
育児休業給付金延長申請において、これまでは下記③のみでしたが、①②③いずれも延長申請の添付資料として必要になります。給付金の延長を目的とし、入園倍率の高い保育園に入所希望を出して、意図的に「落選」させる申請が相次いでいるという懸念から厳格化された制度です。自宅に近い保育園かどうか確認します。

①育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書
②市区町村に保育所等の利用申し込みを行ったときの申込書の写し
③市区町村が発行する保育所等の利用ができない旨の通知(入所保留通知書、入所不承諾通知書など)

【企業の対応】
原則として、1歳誕生日月までに入園申込をして③の不承諾通知を取得しておく(実際に保活行動する)必要があるので、期限を意識した慎重な対応が求められます。今回、添付資料が増えることに関しては、社員への周知が必要です。


3 育児・介護休業法


⑴ 子の看護休暇及び介護休暇取得要件の緩和

【改正内容】
これまで勤続6カ月未満の労働者を、労使協定に基づき、看護休暇や介護休暇の取得対象から除外する仕組みがありましたが、この仕組みが無くなります。すなわち、勤続6カ月未満の労働者も看護休暇や介護休暇の取得対象者となります。

【企業の対応】
就業規則の見直し、該当社員の把握、社員への周知が求められます。


⑵ 子の看護休暇の対象年齢変更(対象拡大)

【改正内容】
子の看護休暇の対象年齢が「小学校就学前」から「小学校3年生修了時」まで拡大されます。また、学級閉鎖や入学式等の子どもの行事参加時にも取得可能となり、勤続6カ月未満の労働者も対象に含まれるようになります。

【企業の対応】
就業規則の見直しや社員への周知が必要です。


⑶ 残業免除の対象年齢変更(対象拡大)

【改正内容】
所定外労働の制限(残業免除)の対象が、3歳未満の子を養育する労働者から、小学校就学前の子を養育する労働者に拡大されます。

【企業の対応】
該当者の把握と労働時間管理が求められます。


⑷ 短時間勤務制度の代替措置にテレワーク追加

【改正内容】
3歳未満の子を育てる労働者に対して、短時間勤務制度を講ずることが困難な場合の代替措置として、テレワークが新たに追加されます。
本件はあくまでも短時間勤務制度を労使協定で適用除外とした労働者の代替措置の話であり、次に説明する育児・介護のためのテレワーク導入に係る努力義務の話と混同注意です。

【企業の対応】
テレワーク制度の整備と就業規則の改定が必要です。


⑸ 育児・介護のためのテレワーク導入(努力義務)

【改正内容】
3歳未満の子(ここは小学校就学前や小学校3年生修了時ではなく3歳未満です)を養育する労働者や、要介護状態の家族を介護する労働者に対して、テレワークを選択できるようにすることが事業主の努力義務となります。

【企業の対応】
テレワークに関する規程の整備、テレワーク環境の整備を検討することが推奨されます。
この点、例えば東京都でしたら、テレワークに関する規程の整備をすることで20万円(定額)、テレワーク機器等の整備をすることで30万円から80万円(助成率1/2~2/3)の「テレワーク導入促進助成金」があります。

参考:東京都:育児・介護との両立のためのテレワーク導入促進事業


⑹ 育児休業取得状況の公表義務の対象拡大

【改正内容】
育児休業の取得状況の公表義務が、従業員数1,000人超の事業主から、300人超の事業主にも拡大されます。

【企業の対応】
従業員数300人超の企業で、これまで特段公表していなかった場合、育児休業取得状況の把握と公表方法の準備が必要です。


⑺ 介護離職防止のための雇用環境整備、個別の周知・意向確認の義務化

【改正内容】
介護休業や介護両立支援制度等の申出が円滑に行われるよう、研修の実施や相談窓口の設置など、いずれかの措置を講じることが義務化されます。また、介護に直面した労働者に対し、事業主は個別に制度の周知や意向確認を行うことが義務化されます。さらに、介護に直面する前の早い段階(40歳等)での情報提供も求められます。

【企業の対応】
具体的な支援体制の構築、対象者への適切な情報提供と面談の実施が必要です。


⑻ 柔軟な働き方を実現するための措置(義務化)

【改正内容】
3歳未満の短時間勤務制度の利用可能期間が終了し、3歳から小学校就学前の子を持つ労働者に対し、柔軟な働き方を実現するための措置(下記記載の措置)を2つ以上提供し、個別の周知・意向確認を行うことが義務化されます。また、妊娠・出産の申出時や子が3歳になる前の時期に、仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取と配慮が求められます。

・始業時刻等の変更
・テレワーク等
・保育施設の設置運営等
・新たな休暇の付与
・短時間勤務制度

【企業の対応】
該当する柔軟な働き方の制度を整備し、労働者への周知と意向確認のプロセスを構築する必要があります。この点、育児を行う労働者の柔軟な働き方を可能とする制度を複数導入し、制度を利用した労働者に対する支援を行った場合には、両立支援等助成金(柔軟な働き方選択制度等支援コース)が活用できる可能性があります。

参考:厚生労働省/両立支援等助成金支給申請の手引き(2024(令和6)年度版)


4 企業の対応まとめ

既に各項目において個別に言及しておりますが、最後に全体としてまとめます。
以上の法改正に対応するために、企業がやるべきことは次の通りです。

・経営者・管理者自身の制度の理解
・就業規則の見直し、改定
・関連する社内規則の見直し、改定
・社員への情報提供と周知徹底
・制度利用のサポート体制構築

就業規則改定をはじめ、対応しておかなければならない事は多いですね。
また、ここでまとめた情報は、関心の高い従業員の方から質問が寄せられる可能性があります。この点、経営者としては、他に専念しなければならない事が多いので、身近に頼れる社会保険労務士がいると安心ですね。


一目でわかる一覧表は当事務所コラムに載せてあります。

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