不動産登記は、土地・建物の所在地や権利関係を公示する制度です。2024年4月からは相続登記が義務化され、不動産登記の重要性はさらに高まっています。
不動産登記制度は、土地・建物の状況や権利について登記簿に記録し、公示する制度です。借主・買主といった第三者に不動産の権利を主張できるのは、登記があるときに限られます。考えられるのは、購入した不動産について登記せず、その後に同じ不動産を購入して先に登記を済ませた人に所有権を主張できなくなるケースです。
とくに注意したいのは、2024年4月に相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に登記申請しなければ罰則の対象となることです。また、2026年4月からは所有者の住所等変更登記も義務化される予定となっています。
新たに登記申請するときは、登記事項証明書を取得し、現在の登記簿の内容を確認しなければなりません。登記簿は表題部と権利部に分かれており、それぞれ異なる情報が記録されています。具体的な見方を確認していきましょう。
登記簿の表題部では、不動産の所在地・地番・地目・地積(土地)や、種類・構造・床面積(建物)といった物理的な情報が記録されています。権利部は甲区と乙区に分かれ、甲区には所有権に関する事項が、乙区には抵当権などの所有権以外の権利が記録されています。また、複数の不動産に抵当権が設定されている場合は、共同担保目録に記載されます。
所有権に関する記載は権利部(甲区)で確認しましょう。所有者の住所・氏名のほか、所有権を取得した原因(売買、相続など)や日付も記載されています。抵当権等の負担は権利部(乙区)で確認し、住宅ローンの有無や借入額、利率などを確認できます。また、仮登記や差押えといった権利制限の有無も重要なチェックポイントです。
不動産登記の手続きは、登記の種類によって必要な書類や手続き方法が異なります。主な登記の種類と、それぞれに必要な手続きは以下のとおりです。
所有権移転登記は、売買や相続により不動産の所有者が変わった場合に行います。売買による場合は、売買契約書、登記識別情報、印鑑登録証明書などが必要です。
相続の場合は、これらに加えて、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や遺産分割協議書なども必要となります。また、所有者の住所変更時には、新旧住所を証明する住民票等を添付します。
抵当権設定登記は、住宅ローンなどで不動産を担保にする際に行います。金融機関との抵当権設定契約書や登記識別情報、所有者の印鑑登録証明書などを要します。
根抵当権は、継続的な取引から生じる不特定の債権を担保する際に利用され、限度額の設定が必要となります。ローン完済後は担保権抹消登記を行い、金融機関発行の抹消書類を添付します。
不動産登記にかかる費用は、登録免許税と専門家への報酬が主なものです。登録免許税は登記の種類によって税率が異なり、売買による所有権移転登記は固定資産税評価額の2%(土地は2026年3月まで1.5%)、相続による場合は0.4%です
複数の権利が絡み合う場合や、相続に関する登記では、弁護士・司法書士などの専門家にあらかじめ相談しておくと良いでしょう。登記の種類ごとに課題を挙げると、次のように言えます。
■相続登記
登記申請にあたっては、遺言書の検認や、遺産分割協議書の作成が原則必要です。登記申請時の添付書類では、戸籍謄本の収集に手間がかかり、時間を奪われがちです。祖父母の代から登記されていない「数次相続」の対象となる不動産は、相続人をさかのぼって捜索するなど、とくに扱いの難しい内容となります。
■所有権移転登記・抵当権設定登記
売買や住宅ローン契約(または完済)に伴う登記申請は、少しでも遅れると大きな損害に繋がる恐れがあります。小規模な取引や抵当権抹消登記では「専門家報酬を節約するため、自分でやりたい」と考える人が多いものの、リスクをとることになるためあまりおすすめできません。
登記手続きの前に専門家に相談することで、将来的なトラブルを未然に防ぐことができます。
不動産登記は、権利関係を公示し、取引の安全を確保する重要な制度です。相続登記の義務化により、適切な登記手続の重要性は一層高まっています。登記手続は自身で行うことも可能ですが、できるだけ弁護士や司法書士などへの事前相談を利用すると良いでしょう。
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