労使トラブル解決とは

労使トラブル解決のイメージ

企業活動において、労使トラブル(労働問題)は避けて通れない課題です。近年、従業員の権利意識の高まりや労働関連法規の改正により、トラブルは複雑化する傾向にあります。ここでは、企業が直面する労使トラブルの具体的な解決方法について、実務的な観点から解説します。

労使トラブルの深刻化と企業リスク

労使トラブルへの対応は、企業経営における重要な課題となっています。適切な対応を怠ると、企業の存続にも関わる深刻な事態を招く可能性があるのです。

増加する労使トラブルの現状

厚生労働省の統計によると、労働紛争に関する相談件数は12年連続で年間100万件を超えています。その内容は、いじめ・嫌がらせに関する相談や、解雇・退職勧奨に関する相談が半数以上を占めており、コロナ禍以降は在宅勤務に関連する新たな労務課題も発生しています。

参考:令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況(厚生労働省)

放置が招く企業への影響

労使トラブルを放置すると、問題が当事者以外にも拡大し、事業運営に大きな支障をきたす恐れがあります。具体的な問題としては、トラブルによる従業員の集中力低下、離職率の増加、社内規律の緩み、士気低下などが挙げられます。さらに、SNSでの拡散により企業イメージが著しく低下するケースも少なくありません。

    ■放置による影響

  • 従業員の集中力低下と生産性の低下
  • 離職率の増加と人材流出
  • 社内規律の緩みと組織風土の悪化
  • SNSでの拡散による企業イメージの低下

代表的な労使トラブルの種類と解決方法

労使トラブルはさまざまな形で発生しますが、主に以下の3つのカテゴリーに分類できます。それぞれの特徴と解決方法について見ていきましょう。

金銭的トラブルへの対応

未払い残業代の請求は、もっとも一般的な労使トラブルの一つです。このような事態を避けるためには、適切な労働時間管理と残業代計算のシステムを構築することが重要となります。また、固定残業代制度の導入や変形労働時間制の活用など、賃金制度の見直しも有効な対策となるでしょう。

    ■対応策

  • 適切な労働時間管理システムの構築
  • 残業代計算の適正化
  • 固定残業代制度の導入検討
  • 変形労働時間制の活用

ハラスメント問題の解決

パワハラやセクハラの問題は、2020年の法改正により、企業に防止措置が義務付けられました。具体的な対応としては、相談窓口の設置、管理職への研修実施、就業規則への懲戒規定の整備などが必要です。また、発生時には迅速な事実確認と適切な処分が求められます。

    ■対応策

  • 相談窓口の設置
  • 管理職への研修実施
  • 就業規則への懲戒規定の整備
  • 迅速な事実確認と適切な処分

雇用関連トラブルの処理

解雇や退職に関するトラブルでは、手続きの適法性が重要な論点となります。とくに整理解雇の場合は、4要件(人員整理の必要性・解雇回避努力・人選の合理性・手続きの妥当性)を満たす必要があります。また、労働条件の不利益変更を行う際は、十分な説明と合意形成のプロセスが不可欠です。

    ■整理解雇の4要件

  • 人員整理の必要性
  • 解雇回避努力
  • 人選の合理性
  • 手続きの妥当性

労使トラブル解決までの具体的プロセス

労使トラブルを円滑に解決するためには、段階的かつ計画的なアプローチが必要です。以下では、具体的な解決プロセスを詳しく解説します。

初期対応のポイント

最初に実施したいのは、事実確認と証拠収集です。内容を客観的に把握し、関連する証拠(メール、勤務記録、契約書など)を収集します。これらは後に交渉や法的手続きで重要な役割を果たします。

また、可能であれば、当事者同士で冷静に話し合い、双方の主張や要望を明確化しましょう。ここで解決できれば、時間やコストを最小限に抑えることが可能です。問題が発生した背景として、就業規則や雇用契約書が適切に運用されているか確認するのも重要です。

    ■初期対応のポイント

  • 事実確認と証拠収集
  • 当事者同士の冷静な話し合い
  • 主張や要望の明確化
  • 就業規則や雇用契約書の確認

専門家介入による解決

初期対応で解決が難しい場合は、専門家の介入による解決を検討します。具体的には、次のような方法が考えられます。

専門家 役割と特徴
弁護士への相談 労働法に基づいた適切な解決策を提示し、交渉や訴訟手続きもサポートします。特に未払い賃金や不当解雇などのケースでは有効です。また、弁護士の支援のもと裁判前の段階で示談交渉や労働審判を活用すれば、迅速かつ低コストな解決が期待できます。
社会保険労務士(特定社労士)などの活用 社労士会などによる「あっせん」は、公平中立な第三者が介入し、話し合いによる解決を目指す制度です。非公開かつ無料で行われるため、プライバシー保護と迅速な解決が期待できます。

上記以外にも厚生労働省の「個別労働紛争解決制度」を利用する手段も考えられますが、今後の防止策の検討や早期解決の面では、経験および知識のある専門家の支援が有効となるケースが多々あります。

裁判所での解決

弁護士を通じた交渉やあっせんでも問題が解決しない場合、裁判所での手続きを検討します。ただし、この段階では時間と費用が大幅に増加するため慎重な判断が求められます。

解決方法 特徴と注意点
労働審判 地方裁判所で行われる迅速な紛争解決手続です。原則3回以内で審理が行われ、高い解決率を誇ります。ただし、証拠準備や主張整理が必要となります。
訴訟 訴訟は最終手段として位置付けられます。判決による白黒つけたい場合には有効ですが、多大な時間と費用がかかるため注意が必要です。また、訴訟になると企業名が公表されるリスクも伴います。

トラブル未然防止への取り組み

労使トラブルは未然の防止が最善策です。今後に向けてあらかじめ下記のような取り組みを行うことで、トラブル発生リスクを軽減できます。

    ■未然防止の取り組み

  • 就業規則や雇用契約書の整備
  • 定期的な従業員教育(ハラスメント防止研修など)
  • 社内相談窓口の設置と運用

まとめ

労使トラブルの解決には、法的知識と実務経験に基づく適切な対応が不可欠です。トラブルが深刻化する前に、専門家への相談を検討されることをおすすめします。

当事務所では、豊富な解決実績を基に問題解決をサポートいたします。労働法改正への対応から個別具体的なトラブルへの対応まで、どんなことでもご相談ください。

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