個人クリニックの経営が順調に拡大しても、高額な所得税の負担に悩む方は少なくありません。事業承継の際には、相続税や贈与税の問題が発生して、スムーズな継承が難しくなることもあるでしょう。
こうした課題を解決する方法の一つが医療法人化です。この記事では、医療法人化の適切なタイミング、医療法人化のメリットとデメリットについて解説します。法人化を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
医療法人とは、医療や介護施設の開設を目的として設立された法人のことをいいます。ここでは、定義や医療法人の種類について解説します。
医療法人は、医療法の規定にもとづいて設立された法人で、以下の定義が医療法によって定められています。
病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設を開設しようとする 社団 又は 財団 は、この法律の規定により、これを法人 とすることができる
前項の規定による法人は、医療法人とする
引用:医療法第39条1第39条2(昭和二十三年法律第二百五号)
医療法人にはいくつかの種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。
医療法人と個人クリニックには、運営形態や税制面で違いがあります。以下の表に主な違いを整理しましたので参考にしてみてください。
医療法人 | 個人クリニック | |
---|---|---|
経営主体 | 理事会が管理 | 院長個人 |
税制 | 法人税 | 所得税 |
診療所数 | 複数の施設が開設できる | 基本は一つのみ |
事業承継 | 事業承継しやすい | 承継時の税負担が大きい |
社会保険 | 加入義務あり | 従業員が5人以下の場合は義務なし |
医療法人化は税制面や事業承継において有利な点がありますが、一方でデメリットも存在します。ここでは、メリットとデメリットについて解説します。
医療法人化によるメリットには以下があげられます。
特にメリットとして大きいのが節税効果とされています。一定の所得があるクリニックでは、医療法人化することで支払う税金を少なくすることができます。
これは、所得税率の上限が45%なのに対して、法人税率の上限が23.2%と定められていることにあります。医療法人化すると雇用保険や健康保険など、社会保険料の負担が発生するため単純な比較はできませんが、一般的には税金を抑えられることが多いです。
参照:所得税の税率|法人税の税率|国税庁
医療法人化には以下のデメリットがあります。
法人化すると経営の透明性が求められるため、決算報告もしっかりと行わなければなりません。個人と法人の資産も明確に区分されるので、資金を自由に使えないこともあります。
また、社会保険への加入義務もデメリットのひとつでしょう。社会保険料は給与の約30%が目安となり、その負担を法人と従業員が折半する「労使折半」が基本です。
そのため、医療法人にとっては従業員ごとに社会保険料の負担が増えることがあります。ただし、条件によっては、医師国保を継続することもできるため、併せて検討してみてください。
一般的に医療法人化を検討すべきタイミングとして以下があげられます。
これらはあくまで目安であり、医療法人化のメリットや節税効果が得られやすいタイミングとされています。個々の状況に併せて、専門家に相談して準備をしていくことが望ましいでしょう。
医療法人化は節税対策や事業承継、事業拡大にとって有効な手段ですが、法人化に伴う複雑な手続きや追加コスト、管理負担などのデメリットも存在します。法人設立に関する専門知識と経験を有するパートナーに相談することで、医療法人化をスムーズに進めることが可能です。法人化を検討している方は、ぜひ専門家にご相談ください。
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