成年後見制度とは、認知症や障がいにより判断能力が不十分な人につき、生活や財産管理において信頼できる人を保護者(後見人など)とする制度です。制度を利用するには、後見開始の審判の申立てにより手続を進める必要があります。
成年後見制度は、認知症や知的障がい、精神障がいなどで判断能力が不十分な方を法的に保護し、支援する制度です。本制度では、家庭裁判所に選ばれた成年後見人などが、本人の財産管理や契約行為を支援します。
すでに判断能力を欠く人について本利用を開始するには、本人の住所地を管轄する家庭裁判所への申立てが必要です。申立てから後見開始までは通常1か月から2か月程度かかり、本人の判断能力に応じて後見・保佐・補助の3類型から適切なものが選択されます。
成年後見制度には、すでに判断能力が不十分な方のための法定後見制度と、将来に備えて契約する任意後見制度があります。それぞれの特徴を理解し、状況に応じて適切な制度を選択することが重要です。
法定後見制度は、本人の判断能力の程度に応じて、「後見」「保佐」「補助」の3類型に分かれています。「後見」は判断能力が欠けている状態、「保佐」は著しく不十分な状態、「補助」は不十分な状態の方が対象です。後見人等の権限は類型によって異なり、「後見」では財産に関するほぼすべての法律行為を代理できますが、「保佐」「補助」では一定の範囲に限定されます。
任意後見制度は、本人が十分な判断能力があるうちに、将来の判断能力低下に備えて後見人となる人を選び、任意後見契約を結んでおく制度です。契約は公正証書で行い、本人が望む代理権の内容を詳しく定めることができます。将来、本人の判断能力が低下した際に家庭裁判所で任意後見監督人が選任され、その時点から契約の効力が生じるしくみとなっています。
成年後見制度の利用開始には、家庭裁判所への申立てが必要です。申立ての準備から提出まで、一連の流れを把握しておくことで、スムーズな手続きが可能となります。
家庭裁判所に申立てを行うには、まず「後見申立手続書類セット」を入手する必要があります。主な必要書類は下記のとおりです。
なお、必要に応じて家庭裁判所が専門医による医学鑑定を実施し、本人の判断能力や自立生活能力を詳しく確認することがあります。
後見開始の審判の申立先は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。申立て後、家裁調査官による申立人と後見人候補者への面談調査が実施されます。この過程で、申立ての理由、本人の経歴・病歴、財産状況などが確認されます。
後見人に選任されると、1か月以内に本人の財産目録を作成し家庭裁判所に提出しなければなりません。後見人は定期的に本人の身心の状態や財産管理の状況を家庭裁判所に報告する義務があります。
なお、成年後見制度は単なる身の回りの世話を依頼する制度ではなく、また資産運用を依頼することもできないことに注意が必要です。
任意後見制度を利用するには、後見の内容について後見人候補者とじっくり話し合い、契約書を作成しなければなりません。契約書に沿って後見を開始するにあたっては、家庭裁判所への申立てが必要です。
任意後見人の候補者は、未成年者や破産者などの特殊な事情がない限り、基本的に誰でもなることができます。ただし、信頼できる人柄であることはもちろん、後見事務を適切に遂行できる能力が必要です。また、契約から発効までに時間がかかる可能性があるため、候補者の年齢や健康状態も重要な考慮要素となります。
契約締結には公正証書の作成が必要です。契約書には任意後見人の権限範囲、報酬、契約の解除方法などを明記します。作成には基本手数料11,000円、登記嘱託手数料1,400円、印紙代2,600円などの費用が必要です。契約締結後、公証役場から法務局に通知され、内容が登記されます。
本人の判断能力が低下した段階で、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てます。申立ては本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者が行うことができます。主な必要書類は下記の通りです。
成年後見制度の利用には、さまざまな手続きと専門的な知識が必要です。本人の権利を守り、適切な支援を行うためにも、早い段階で弁護士に相談し、制度利用の検討を始めましょう。
該当する投稿はありません。