相続税の課税対象となる人は年々増加傾向にあり、相続税対策の重要性は高まっています。節税のためには、生前贈与や不動産の活用、生命保険の利用など、さまざまな選択肢があります。
相続税は被相続人から引き継いだ財産に対して課される税金です。課税対象となる財産には、預貯金、有価証券、不動産、生命保険金などが含まれ、葬儀費用や債務は控除できます。実際に課税されるのは基礎控除額を超えた部分で、税率は10%から55%となります。
相続税が課税される人は、令和5年分の実績で被相続人の数(死亡者数)の9.9%と報告されています※。この割合は年々上昇傾向にあり、税率が改正される可能性も否定できないことから、十分な準備期間を設けたうえでの相続税対策は必須と言えます。
生前贈与は、将来の相続財産を計画的に減らすことができる有効な相続税対策です。贈与税の基礎控除や各種特例制度を活用することで、相続時の税負担を大幅に軽減することが可能となります。
贈与税の基礎控除額である年間110万円を活用した暦年贈与は、最も基本的な相続税対策のひとつです。毎年同額・同時期の贈与は「定期贈与」とみなされるリスクがあるため、贈与時期や金額に変化をつけるなど、計画的な実行が重要となります。
贈与税申告では、60歳以上の父母・祖父母から成年年齢に達している子・孫に贈与する場合に、相続開始時までの累計で2,500万円まで非課税になる「相続時精算課税制度」も選択できます。本制度は近年改正があり、2024年度(令和6年度)の贈与から毎年110万円の基礎控除と併用できるようになりました。
教育資金の一括贈与では1,500万円まで、結婚・子育て資金の一括贈与では1,000万円まで非課税となります。これらの特例は、将来の支出に備えた資金を前倒しで贈与できる優れた制度といえます。
また、60歳以上の親から、20歳以上の子に対して2,500万円までの贈与を非課税とする相続時精算課税制度も有効です。ただし、一度この制度を選択すると暦年贈与に戻れないため、慎重な判断が必要です。
不動産は相続財産の中で大きな割合を占めることが多く、その評価方法や特例制度を理解することは、効果的な相続税対策の鍵となります。とくに小規模宅地等の特例は、最大80%もの評価減が可能な強力な節税手段です。
居住用宅地は330㎡まで、事業用宅地は400㎡までの部分について、最大80%の評価減が可能です。この特例を活用することで、相続税の課税価格を大幅に圧縮することができます。
特例の適用には、被相続人の居住要件や事業継続要件など、複数の要件を満たす必要があります。また、相続開始から申告期限までに相続人が居住を継続するなどの要件もあるため、事前の準備が重要です。
賃貸不動産は、土地は貸家建付地として、建物は貸家として評価され、自用の場合と比べて評価額が低くなります。また、収益不動産からの賃料収入は、相続人の将来の納税資金としても活用できます。
ただし、収益不動産投資は長期的な視点が必要です。立地や収益性の見極め、維持管理コストなども考慮した総合的な判断が求められます。
生命保険契約に基づいて支払われる死亡保険金には「法定相続人数×500万円」の非課税枠があります。たとえば、配偶者と子2人の場合、1,500万円まで非課税となります。
一時払いの終身保険を活用すれば、解約返戻金を活用した資産移転も可能です。ただし、保険料の支払いが資産の減少につながるため、生活設計とのバランスを考慮する必要があります。
相続税対策には、生前贈与による計画的な資産移転、小規模宅地等の特例を活用した不動産対策、生命保険による非課税枠の活用など、多様な方法があります。ただし、これらの対策は一朝一夕にはできません。相続税の課税対象となる可能性がある場合は、できるだけ早くから専門家に相談すると安心できるでしょう。
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