企業の持続的な成長には、計画的な人材育成が不可欠です。しかし、社員の教育訓練の実施にはさまざまな課題が伴います。ここでは、教育訓練を成功させるための法的な注意点や、活用できる助成金制度について解説します。
社員教育訓練とは、従業員の職務遂行能力を向上させるために行う体系的な取り組みです。労働契約法では、使用者は労働者に対して、その職務を遂行するために必要な教育訓練を実施する義務があると定められています。
社員の教育訓練の目的は、業務で必要となるスキルや知識を習得させることになります。より実務的には、経営理念や企業の方針を浸透させることや、社員の意識に起因するリスク(情報漏洩や、社内および取引先との関係におけるモラルハザードなど)を防ぐ目的もあります。
教育訓練の実施にあたっては、時間やコストの負担が大きな課題となっています。また、研修効果の測定が難しく、従業員のモチベーション維持も容易ではありません。とくに中小企業では、人員不足により十分な時間が確保できないケースが多く見られます。
教育訓練にかかるコストを軽減するため、国は様々な助成金制度を用意しています。制度を適切に活用することで、効果的な人材育成を実現することができます。
厚生労働省が所管する人材開発支援助成金は、企業の教育訓練をサポートする制度です。OFF-JT(集合研修など)やOJT(職場内訓練)の実施に係る経費や賃金の一部が助成されます。支給要件を満たせば、訓練経費の最大60%が支給される場合もあり、教育訓練のコスト負担を大幅に軽減できます。
助成金の申請には、訓練開始前の計画届の提出が必須です。提出書類の不備や期限超過により不支給となるケースも多いため、専門家のサポートを受けるとよいでしょう。訓練実施記録などの書類を5年間保管することが義務づけられている点など、支給後の対応にも要注意です。
教育訓練を効果的に実施するためには、適切な法的対応が不可欠です。就業規則への反映や労働時間の取り扱いなど、重要なポイントについて解説します。
教育訓練を円滑に実施するには、就業規則に明確な規定を設ける必要があります。具体的には、受講義務の範囲や費用負担のルールを定めておくことが重要です。とくに資格取得支援を行う場合は、費用の返還条件なども明記しておくべきでしょう。
教育訓練時間が労働時間に該当するかどうかは、研修の内容や受講の強制性によって判断されます。業務命令による研修は原則として労働時間となり、 時間外手当の支払いが必要になる場合があります。自己啓発との区分を明確にしておくことが大切です。
教育訓練をめぐっては、さまざまな労使トラブルが発生する可能性があります。ここでは、典型的なトラブル事例とその予防策について説明します。
教育訓練をめぐるトラブルとして、研修受講の拒否や費用負担の争いが発生するケースがあります。また、研修時間の時間外手当請求も増加傾向にあり、適切な対応が求められています。
トラブルを防ぐには、教育訓練に関する規定を整備し、従業員から事前に同意を得ておくことが重要です。また、研修の実施記録や同意書などの証拠書類を適切に保管しておく必要があります。
社員教育訓練は、企業の成長に不可欠な取り組みですが、法的な対応を誤ると思わぬトラブルを招くことがあります。助成金の活用や規定の整備など、実務面での対応には専門家への相談をおすすめします。
当事務所では、教育訓練の方法や助成金の申請、労使トラブルのリスク対策など、幅広い内容で支援を行っています。社員の能力開発やモチベーションアップにお悩みのときは、お気軽にご相談ください。
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