経営労務監査とは

企業経営において、定期的な健康診断が必要なことをご存知でしょうか。経営診断とは、企業の経営状態を客観的に分析・評価し、課題を発見して改善策を提案するプロセスです。近年、法規制の強化や経営環境の急速な変化により、企業はさまざまなリスクに直面しています。

経営診断とは？企業経営の健康診断について解説

経営診断は、企業の財務状況、業務プロセス、組織体制など、経営全般を専門家の視点で総合的に診断する取り組みです。人間の健康診断と同様に、企業経営においても定期的なチェックが重要となります。

近年のVUCA時代において、環境変化への適応力と迅速な意思決定が求められるなか、経営診断の重要性は一層高まっています。とくに法的リスク管理の観点では、コンプライアンス体制の確認や潜在的な法務リスクの早期発見に役立ちます。

■経営診断のメリット
• 企業の強みと弱みを客観的に把握できる
• 潜在的な経営リスクを早期に発見できる
• 法務・税務・財務などの専門的視点からアドバイスを得られる
• 持続的な企業成長のための改善策を見出せる

経営診断で確認すべき重要項目

経営診断では、財務面と業務面の両方から、企業の健康状態を総合的に確認することが重要です。特に法的リスク管理の観点から、以下の項目について詳細な確認が必要です。

財務面のチェックポイント

収益性分析では、売上高利益率やROEなどの指標から企業の収益力を評価します。安全性分析では、自己資本比率や流動比率などから財務基盤の安定性を確認しなければなりません。資金繰り状況の確認では、キャッシュフローの健全性を評価し、債務超過や倒産リスクを予防します。

■財務面の主なチェックポイント
• 収益性分析（売上高利益率、ROEなど）
• 安全性分析（自己資本比率、流動比率など）
• 資金繰り状況（キャッシュフローの健全性）
• 債務超過や倒産リスクの予防

業務面のチェックポイント

組織体制・人事管理では、労務管理の適切性や就業規則の整備状況を確認します。内部統制システムでは、業務の適正を確保するための体制整備状況が評価の対象です。コンプライアンス体制では、法令遵守の仕組みや社内規程の整備状況を確認し、法的リスクの低減を図ります。

■業務面の主なチェックポイント
• 組織体制・人事管理（労務管理の適切性、就業規則の整備状況）
• 内部統制システム（業務の適正を確保するための体制整備）
• コンプライアンス体制（法令遵守の仕組み、社内規程の整備状況）

経営診断のプロセスと進め方

経営診断を効果的に実施するためには、体系的で段階的なアプローチが必要です。専門家の支援を受けながら、以下のステップを順に進めることで、企業の課題を的確に把握し、解決策を導き出すことが可能です。

診断前の準備

経営診断では、会社の現状を正確に把握するための資料が欠かせません。具体的には、下記のような書類が必要です。

■必要な準備資料
• 過去3～5年分の財務諸表（貸借対照表、損益計算書など）
• 会社概要（事業内容、組織図、沿革など）
• 主要契約書（取引先との契約書やリース契約書など）
• 就業規則や労働契約書

これらの資料は、企業の財務状況や内部管理体制を把握するために重要であり、診断精度を高める役割を果たします。

経営課題の整理

事前に経営者や管理職とのヒアリングを行い、現状抱えている問題点や懸念事項を洗い出します。この際、表面的な問題だけでなく、その背景にある根本原因（真因）を特定することが重要です。たとえば「売上減少」という課題があれば、その原因として市場ニーズとのミスマッチや営業力不足などが考えられます。

診断目的の設定・企業分析

経営診断の目的を明確化し、具体的な改善目標を設定します。具体的には「資金繰り改善」「収益性向上」「新規事業展開」など、達成したいゴールを明確にすることで、診断結果が実際の経営改善につながりやすくなるでしょう。

また、収集したデータや情報をもとに、企業の強み・弱みを分析します。分析手法としては、財務分析、SWOT分析、市場動向調査などを用います。

課題抽出と仮説立案

現状分析で得られたデータから具体的な課題を洗い出し、それに基づいて改善仮説を立てます。この際には、下記のような観点が必要です。

■課題抽出の観点
• 経営資源（人材・設備・資金）の適切な配分
• 法的リスクやコンプライアンス上の問題点
• 業務プロセスや組織体制の効率性

仮説には優先順位付けが必要であり、「影響度」「緊急度」「改善コスト」など複数の基準で評価します。

改善策の検討と実行計画策定

課題ごとに具体的な改善策を立案し、その実行計画を策定します。具体的には、下記の項目が必要です。

■実行計画に含めるべき項目
• 優先順位に基づいたスケジュール
• 必要なリソース（人員・予算）の割り当て
• 期待される成果とその測定方法

経営診断で発見される主な法的リスク

経営診断では、企業活動全般に潜む法的リスクも明らかになります。これらは放置すると重大な問題につながる可能性があるため、早期発見と対策が不可欠です。

内部管理体制に関するリスク

取締役には会社法上、善管注意義務と忠実義務が課されています。しかし、不適切な経営判断によって損害が生じた場合、この義務違反として責任追及されるリスクがあります。とくに経営判断の原則の範囲外で行われた意思決定は、訴訟リスクにつながると言わざるを得ません。

また、内部統制システムが整備されていない場合、不正行為やコンプライアンス違反が発生しやすくなります。この不備は、株主代表訴訟や行政指導につながる可能性もあります。

■内部管理体制のリスク例
• 取締役の善管注意義務違反
• 不適切な経営判断による訴訟リスク
• 内部統制システムの不備
• 不正行為やコンプライアンス違反の発生

取引上のリスク

取引先との契約書内容が曖昧だったり、不備がある場合、後々トラブルになる可能性があります。とくに重要なのは、契約条件（納期・支払条件など）や、紛争時対応条項です。

また、取引先の信用状況悪化や倒産による未回収債権は企業財務に大きな影響を与えます。これを防ぐためには与信管理体制や早期警戒システムの導入が必要です。

■取引上のリスク例
• 契約書の不備（曖昧な条件、紛争時対応条項の欠如）
• 取引先の信用状況悪化による未回収リスク
• 与信管理体制の不備

まとめ

経営診断は、企業の持続的な成長と健全な経営を支える重要なツールです。とくに法的リスク管理の観点から、定期的な診断実施と専門家への早期相談が望ましいと言えます。

当事務所では、経営診断に関する多角的なサポートを提供しています。お気軽にご相談ください。