給与計算は従業員の勤怠の取りまとめ、手当や社会保険料、税額控除といった、複雑な計算が伴う業務です。もし間違った方法で計算をしてしまうと、企業の信頼性や従業員のモチベーション低下にもつながりかねません。
この記事では、給与計算の方法と注意点を解説します。これから初めて給与計算をする方は、参考にしてみてください。
給与計算とは、従業員の労働時間や契約内容をもとに、支払う給与額を計算する一連の流れのことをいいます。一般的には月に1回、行うことになる業務です。
1. 総支給額の計算
2. 控除額の計算
3. 差引支給額の計算
おおまかには、この3段階で進めていくことになります。最終的に従業員に支払う金額は以下の計算で求められます。
総支給額 ー 控除額 = 差引総支給額
具体的な控除額としては、
これらの控除は従業員情報にもとづいて計算します。
給与計算の手順は、
1. 勤怠時間を集計する
2. 基本給と手当の計算
3. 社会保険料や税金の計算
4. 差引支給額の計算と支払い
このような流れで行います。それぞれ具体的に解説します。
従業員の出勤と退勤時間、休暇、残業時間を正確に記録して計算します。勤怠時間の集計では以下の項目を確認しましょう。
タイムカードや出勤記録表を確認して、従業員の勤怠を一覧にするとわかりやすいです。
従業員との契約内容にもとづいて、基本給や各種手当、割増賃金の計算を行います。
基本給は昇給や減給がない限り、毎月同じ金額になります。一方で、各種手当には金額が変わるものもありますので、それぞれ計算が必要となります。
健康保険、厚生年金、雇用保険などの社会保険料、所得税や住民税といった税金の控除額の計算を行います。控除額とは支給額から差引く金額のことをいいます。
各種控除の金額は、それぞれで定められているため、ひとつずつ確認して計算を行わなければなりません。
例えば、厚生年金保険料では以下のような計算式になります。
標準報酬月額×厚生年金保険料率÷2=厚生年金保険料
従業員それぞれの報酬月額を計算して、日本年金機構が公表している保険料率に当てはめて算出します。現在の保険料率は18.3%で固定されていますが、年金制度の改革によって保険料率が変更される可能性はあります。
総支給額から各種控除を差し引き、従業員が実際に受け取る手取り額を計算します。
給与明細を作成して、従業員へ支給すれば完了です。
給与計算は、会社の規定や法律によって定められたルールを守る必要があります。間違った計算をしてしまうと、トラブルにもなりかねませんので以下のポイントに注意しましょう。
給与支払には、「通貨で」「直接」「全額」「毎月」「一定の期日までに」という5原則があります。これらを守らない場合は、法律違反となる可能性があるため注意が必要です。
地域ごとに定められている最低賃金以上を支払う必要があります。最低賃金の改定は毎年10月ごろに行われていますので、新しい情報を確認して、給与計算を行うようにしましょう。
時間外労働や深夜労働、休日労働には、法律で定められた割増賃金を適用する必要があります。割増率は企業で設定できますが、法律によって最低限の基準が設けられています。労使トラブルの原因にもなることもありますので注意しましょう。
同じ給与でも、従業員が扶養する家族の人数によって所得税額が異なります。扶養親族の変更があった場合には、速やかに連絡してもらうよう従業員への周知も大切です。
はじめて給与計算をする会社はExcelなどで管理しているところも少なくありません。給与計算は複雑になりやすいので、どうしても計算ミスが起こってしまうことがあります。
ミスが減らせるように、ダブルチェックをする、給与管理システムの導入を検討するなどの工夫も必要になるでしょう。
初めての給与計算では、計算の複雑さからミスや漏れが発生しやすくなるものです。会社の信頼性や従業員のモチベーションにつながるため、可能な限り計算ミスは避けたいところでしょう。
給与計算の体制を整えるためには、システムの導入だけでなく、専門知識と経験を有する方への相談も検討してみてください。
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