給与計算とは

給与計算のイメージ

給与計算は従業員の勤怠の取りまとめ、手当や社会保険料、税額控除といった、複雑な計算が伴う業務です。もし間違った方法で計算をしてしまうと、企業の信頼性や従業員のモチベーション低下にもつながりかねません。

この記事では、給与計算の方法と注意点を解説します。これから初めて給与計算をする方は、参考にしてみてください。

給与計算とは

給与計算とは、従業員の労働時間や契約内容をもとに、支払う給与額を計算する一連の流れのことをいいます。一般的には月に1回、行うことになる業務です。

1. 総支給額の計算
2. 控除額の計算
3. 差引支給額の計算

おおまかには、この3段階で進めていくことになります。最終的に従業員に支払う金額は以下の計算で求められます。

総支給額 ー 控除額 = 差引総支給額

具体的な控除額としては、

    ■主な控除項目

  • 健康保険料
  • 厚生年金保険料
  • 介護保険料
  • 雇用保険料
  • 所得税
  • 住民税

これらの控除は従業員情報にもとづいて計算します。

給与計算のおおまかな流れ

給与計算の手順は、

1. 勤怠時間を集計する
2. 基本給と手当の計算
3. 社会保険料や税金の計算
4. 差引支給額の計算と支払い

このような流れで行います。それぞれ具体的に解説します。

勤怠時間を集計する

従業員の出勤と退勤時間、休暇、残業時間を正確に記録して計算します。勤怠時間の集計では以下の項目を確認しましょう。

    ■勤怠管理の確認項目

  • 所定労働日数
  • 勤務日数
  • 労働時間
  • 有給取得日数
  • 欠勤日数
  • 遅刻や早退時間
  • 残業時間
  • 深夜残業時間
  • 休日出勤時間

タイムカードや出勤記録表を確認して、従業員の勤怠を一覧にするとわかりやすいです。

基本給と手当の計算

従業員との契約内容にもとづいて、基本給や各種手当、割増賃金の計算を行います。

基本給は昇給や減給がない限り、毎月同じ金額になります。一方で、各種手当には金額が変わるものもありますので、それぞれ計算が必要となります。

    ■主な手当の種類

  • 通勤手当
  • 住宅手当
  • 残業手当
  • 役職手当
  • 資格手当
  • 家族手当

社会保険料と税額の計算

健康保険、厚生年金、雇用保険などの社会保険料、所得税や住民税といった税金の控除額の計算を行います。控除額とは支給額から差引く金額のことをいいます。

各種控除の金額は、それぞれで定められているため、ひとつずつ確認して計算を行わなければなりません。

例えば、厚生年金保険料では以下のような計算式になります。

標準報酬月額×厚生年金保険料率÷2=厚生年金保険料

従業員それぞれの報酬月額を計算して、日本年金機構が公表している保険料率に当てはめて算出します。現在の保険料率は18.3%で固定されていますが、年金制度の改革によって保険料率が変更される可能性はあります。

    ■社会保険料計算のポイント

  • 標準報酬月額を正確に把握する
  • 最新の保険料率を確認する
  • 労使折半の項目は半分を控除
  • 年齢による保険料の違いに注意

差引支給額の計算と支払い

総支給額から各種控除を差し引き、従業員が実際に受け取る手取り額を計算します。

給与明細を作成して、従業員へ支給すれば完了です。

    ■差引支給額計算の流れ

  • 総支給額の確定(基本給+各種手当)
  • 社会保険料の控除
  • 所得税・住民税の控除
  • その他控除(財形貯蓄、組合費など)
  • 最終的な手取り額の計算

給与計算をするときの注意点

給与計算は、会社の規定や法律によって定められたルールを守る必要があります。間違った計算をしてしまうと、トラブルにもなりかねませんので以下のポイントに注意しましょう。

賃金支払の5原則を守る

給与支払には、「通貨で」「直接」「全額」「毎月」「一定の期日までに」という5原則があります。これらを守らない場合は、法律違反となる可能性があるため注意が必要です。

    ■賃金支払の5原則

  • 通貨払いの原則:現金で支払う(口座振込も可)
  • 直接払いの原則:本人に直接支払う
  • 全額払いの原則:給与を全額支払う
  • 毎月払いの原則:給与を毎月支払う
  • 一定期日払いの原則:支払日を決めて支払う

地域の最低賃金を確認する

地域ごとに定められている最低賃金以上を支払う必要があります。最低賃金の改定は毎年10月ごろに行われていますので、新しい情報を確認して、給与計算を行うようにしましょう。

    ■最低賃金に関する注意点

  • 地域ごとに金額が異なる
  • 毎年改定される(通常は上昇)
  • パートやアルバイトも対象
  • 違反すると罰則がある

割増賃金の確認をする

時間外労働や深夜労働、休日労働には、法律で定められた割増賃金を適用する必要があります。割増率は企業で設定できますが、法律によって最低限の基準が設けられています。労使トラブルの原因にもなることもありますので注意しましょう。

    ■法定割増率の最低基準

  • 時間外労働:25%以上
  • 深夜労働(22時~5時):25%以上
  • 休日労働:35%以上
  • 時間外+深夜:50%以上

扶養家族の人数を把握する

同じ給与でも、従業員が扶養する家族の人数によって所得税額が異なります。扶養親族の変更があった場合には、速やかに連絡してもらうよう従業員への周知も大切です。

    ■扶養控除に関する確認事項

  • 年末調整時に扶養控除申告書を提出してもらう
  • 扶養家族の変更があれば随時確認
  • 年齢や収入状況に応じた控除額の違いに注意
  • 特別控除(障害者、寡婦、ひとり親など)の確認

計算ミスを防ぐ工夫をする

はじめて給与計算をする会社はExcelなどで管理しているところも少なくありません。給与計算は複雑になりやすいので、どうしても計算ミスが起こってしまうことがあります。

ミスが減らせるように、ダブルチェックをする、給与管理システムの導入を検討するなどの工夫も必要になるでしょう。

    ■計算ミスを防ぐ対策

  • 給与計算ソフトの導入
  • 複数人によるダブルチェック
  • マニュアルの作成と更新
  • 専門家(社労士など)への相談

まとめ

初めての給与計算では、計算の複雑さからミスや漏れが発生しやすくなるものです。会社の信頼性や従業員のモチベーションにつながるため、可能な限り計算ミスは避けたいところでしょう。

給与計算の体制を整えるためには、システムの導入だけでなく、専門知識と経験を有する方への相談も検討してみてください。

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