資産税は、相続税・贈与税・譲渡所得税の総称で、財産の移転や譲渡時に課される税金です。近年の税制改正により、課税の仕組みは複雑化しており、対策を誤ると思わぬ税負担が生じるリスクがあります。
相続や贈与、不動産の売却など、財産を移転するときは原則として課税があります。これら「資産税」は、取引の方法や時期によって税負担が大きく変わる特徴があります。例を挙げるなら、不動産の贈与と売却では適用される税率が異なり、相続時精算課税制度の活用で節税できる場合もあるのです。
資産税は、財産の移転方法によって課税のタイミングと税率が異なります。それぞれの特徴を理解することが、適切な対策の第一歩です。
相続税は、相続開始時の財産評価額(※葬祭費用などの債務は控除)から基礎控除額を差し引いた金額に対して課税されます。「平成27年1月1日以降の相続から基礎控除額は『3,000万円+600万円×法定相続人の数』で計算し、これを超える部分については法定相続人ごとに税額を計算します。
課税されるときの税率は、課税対象額に応じて10%から55%です。なお、課税評価額については「配偶者の税額の軽減」や「小規模宅地等の特例」などの特例措置があり、適用要件に該当するときは積極的に活用したいところです。
贈与税は、生前贈与により財産を取得した際に課される税です。年間110万円までの基礎控除があり、この範囲内であれば非課税となります。税率は相続税より高めに設定されていますが、60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上(令和4年4月1日以降)の子や孫への贈与では、相続時精算課税制度を活用して節税できるケースがあります。
相続時精算課税制度は2024年以降の贈与から見直しが行われ、従来の2,500万円の特別控除に加えて、年間110万円の基礎控除が新設されました。ほかにも、教育資金や住宅資金の贈与にあたっては、一定額まで課税されない特例が用意されています。これらの制度を活用することで、生前のうちにまとまった額を贈与し、特定の相続人に財産を集中させる・相続財産の評価額を減らすなどといった対策ができます。
不動産や株式などを売却した際には、その利益について譲渡所得税の課税があります。不動産については、売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた金額が課税対象となり、所有期間が5年超の長期譲渡所得は20.315%、5年以下の短期譲渡所得は39.63%の税率が適用されます。
なお、譲渡所得税についても、マイホーム売却時の3,000万円の特別控除や、相続した空き家の売却特例など、各種の特例制度が設けられています。これらを活用することで、相続対策・住み替えなどを低い負担で行えます。
親族間での財産移転では、意図せず追加の税負担が生じるケースがあります。特に注意が必要なのが、「みなし贈与」と「二重課税」の問題です。
著しく低い価格での取引は「みなし贈与」として贈与税が課税される可能性があります。とくに親族間取引では、時価との差額に贈与税が課されるため、適正な価格での取引が重要です。具体的には、市場価格の調査や不動産鑑定評価の取得など、慎重な対応が求められます。
相続した不動産を売却する場合、譲渡所得の計算において被相続人の取得費を引き継ぐため、結果として相続税と譲渡所得税の負担が重くなる場合があります。また、贈与を受けた財産の売却でも同様の問題が発生しかねません。こうしたケースでは、各種の特例措置の活用を検討する必要があります。
資産税対策は、財産の状況や家族構成によって最適な方法が異なります。以下のような場面では、課税が発生する前の早い段階で専門家に相談することをおすすめします。
財産の評価方法は資産の種類によって異なり、相続税や贈与税の税負担を正確に試算するには専門的な知識が必要です。また、将来の相続を見据えた生前贈与の計画立案では、贈与の時期や方法の検討も重要となります。
不動産の売買や贈与を行う際は、適正価格の判断や必要書類の確認が不可欠です。また、特例措置の適用要件を満たしているかの確認も求められます。税務上の取扱いを誤ると、予期せぬ税負担が生じる可能性があります。
相続税・贈与税・譲渡所得税の課税は、過大申告による損失を防ぐため、状況や今後の予定を見越した対策が必要です。適切な対策を講じることで、手元に残る利益を最大化できます。
当事務所では、相続・贈与・譲渡に関する税務相談を承っており、お客様の状況に応じた具体的な対策を提案しています。生前対策や相続、住み替え、資産ポートフォリオの見直しなど、資産税の課税を控えているときは是非ご相談ください。
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